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ある日の雨話に想う/『アメトーーク 読書芸人(2012年、初回)』

 

 

2012年2月の 『アメトーーク! 読書芸人』 鑑賞記。ざっくばらんに書いております。敬称略。


アメトークにて、ついに「読書芸人」が放送された。

……いやあ。
嬉しかった。

昨日はテレビチェック担当の相方が、「アメトークを見て!」とテレビ前まで私を導いてくれたおかげでこの歴史的瞬間に立ち会うことが出来たのです。

なんだか感慨深いですね。
ついにこの日が来たか。
まさか公共の電波で、読書が趣味な人々の集団を見られるとは思いませんでした。
又吉くんのおかげですね。有難う。

「読書が趣味」などと、大っぴらに言えない世の中です。
なにせただ本が好きというだけで暗いと決めつけられ気持ち悪がられたり。
「そんなもの趣味ではない」と蔑まれたり。
何より「読書が好きで」、と言った時点で会話が終わるのが悲しい。以降避けられていることを感じるようになる。

仮に読書好きだという人と巡り合っても必ずしも理解し合えるわけでもない。「頭良さげに見られるから」、「読書で他人に勝ちたいから」、というだけで好きでもないのに本を読んでいる“振り”をしている人も実在するからだ。
(参照⇒「読書家たちの憂鬱」1 2)

『アメトーク』に出ていた芸人さんたちも、又吉以外は日ごろ読書好きであることを言わない人たちだったな。
言えないのだろう。意外な顔ぶれが多かった。
特に若林、本読むイメージ全くなかったのだが相当好きみたいだ。又吉以上に熱を感じた。

若林はこの間ちらっと爆笑問題の『ストライクTV』の本の回で見かけて読書好きだと知り、驚いた。
その番組では太田も又吉も一般受けする本を紹介していたのでガッカリさせられたのだが、若林ひとりだけ本気で自分の好きな本のことを語って空気を乱していたのが印象深かった。
(若林が紹介したのは『苦役列車』。内容も一般受けするとは言えないが、何より芥川賞で誰もが知っている小説を紹介するという空気の読めなさ。この空気読めない感が“本気で好き!”熱を伝えてきた)

だいたい、
「ミステリ小説以外は存在してはならない」だの
「エンターテイメント以外は犯罪だ」とか
「純文学なんか読む価値なし」だとか言って他人の読むもの否定してばかりいる自称・読書好きは、間違いなく似非読書家だ。

他人の読む本を否定する暇があったら、一冊でもいいからあんなふうに熱く本のことを語ってみろと思う。

*

で、読書あるある。

これも唯一、若林の話に共感した。
「本屋でバッタリ知り合いに会ったら、相手に悪いので何の本を買ったか聞けない」。
というところ。分かる分かる。

すかさず宮迫が、
「お互い女連れて歩いているときにバッタリ会うた時の気まずい感じ?」
と聞いてくれてなおさら共感した。

だよなあ。そんな感じだ。
人の彼女、彼氏はじろじろ見てはいけない。失礼でしょう。それと似ている。

他人の持っている本は覗き込めない。
自分も覗かれたら嫌だしな。
それに、本屋での時間は大切なものだから壊したくないという気持ちも分かる。
あまり友人と一緒には本屋に行けない。好きな本を探すあまり相手の存在を忘れてはぐれてしまう。そうならないよう常に気を配らねばならないので疲れる。結果、友人と行った場合は本気で本を探すのは諦めることになる。
やはり本屋で過ごす時はどっぷり一人の世界に浸りたい。

他の「あるある」はあまり共感出来るところは少なかったな。
やはり読書好きには色々とバリエーションがあって、噛み合うところが少ないと感じる。だからなかなか読書好き同士でも友達になれないのか。

以下、自分の場合。

・私は風呂場で本を読むことはしない。
(湿気で紙がふやけ、しわになるのが我慢ならない)

・食べながら本を読むことは滅多にしない。
(上と同じ理由。基本、本を汚すのは嫌だ)

・帯ははずす。
(読む時に邪魔だから)

・はずした帯はとっておいて、戻す。

・どうしても捨てられない本だけ残し、後は売る。
(貧乏でとっておくスペースがないから。また本棚崩壊の経験があるから。ちなみに「始めから売る予定なので食べ物等で汚したくない」のではない。汚れが嫌なのは純粋に読む際の自分の生理的問題)

・古書など高い本のコレクターにはならない。
(一番の理由は貧乏で買えないから、笑。あと本は読むためにあるもの。コレクションの対象とするのは失礼と思ってしまう。…でも、太宰の初版とかは魅力を感じますがね)

・読書のベスト場所は喫茶店。
(これは又吉に同じ。公園で読むのも好きだ。喫茶店の場合、個人経営の古い店のほうが雰囲気はあるのだが実は読書向きではない。長居をすると店主の目が気になるし、顔を覚えられて話しかけられてしまうことがある。チェーン系の大型店舗で気に入りの席を持つのが理想。なお個人的にはスタバよりドトールが好み、ルノアールあれば最高。読書喫茶の頂点はルノアールだと思う)

・難解な本でもとりあえず最後まで目を通す。
(分からないからといって線を書き込んだり、後にとっておくということはしない。とりあえず一度ざっとでも最後まで目を通して感覚に委ねる。それで感覚に響くものがなければ諦める。相性の悪い作家は必ずいる)

・「ごほうび本」としてマンガを読む? 全く意味が分からない。分厚い本こそ「ごほうび」だろう。
(声を大にして言いたかった。これだけは本好きとして譲れない)

あと、皆さんやはり「小説好き」ですよね。
ストーリーを楽しんでらっしゃる。
夢中になると食事時でも読むのをやめられない、他の人に話し掛けられても答えることすら出来ない、そんな集中力は私にはないので尊敬してしまう。彼らは本物の活字中毒者だ。
自分もストーリーを楽しむことは楽しむのだが、それ以上に「読む行為」そのものが好きだ。
だから本なら何でも良いところがある。

実は私、ここ数年ほど小説は数えるほどしか読んでいない。
ほとんど仕事用の無味乾燥なテキストばかり読み漁っている。それでもどうにか発狂せずに済んでいるのは、文字を読むことが出来さえすれば気が済むから。

衝動にかられて猛烈に本を読み漁るということもあまりない。 
どんなに面白くてもいつでも中断出来る。
だから食事中は読まなくても済むし、旅行に持って行く本も適度な重さであれば内容は何でも良い。テキストでもOK。

これはたぶん、成長してから何かのきっかけで急激に本好きになったか、それとも幼児期から意識せず読書好きだったかの違いかもしれない。
私の場合、
「ある本が面白くて夢中になり、それから読書好きになった」
というきっかけが一切思い出せない。
気付いた時は既に本が手放せない体質だった。
それでずっと、空気を吸うように一定のペースで本を読んできた。

空気を吸うのに「面白くてたまらないから猛烈に吸い続ける」ことはないと思う。無意識に淡々と一定のペースで吸い続けているだけのはず。
その代わり、空気を絶たれたら苦しい。死んでしまう。
それと同じ感覚で、本を丸一日以上絶たれたら私は苦しい。だから読む。小説がなければテキストを。それがなければ手近な文の並びを。
(新聞、雑誌、なければ辞書。…電話帳を読んだこともあった。これは末期症状)