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『ドクター・ヘリオットの猫物語』感想

 クリスマスに小さな包みをいただいた。
何だろうと思って開けてみたら、可愛い文庫本が出てきた。

ちょっと驚いて、歓喜した。
まずプレゼントとして本をいただくことほど嬉しいものはない。
今まで私に小説本を贈ってくれたのは家族だけ。つまり私が芯から本好きであることを知っている人たちだけだった。
今回、初めて友人から小説本をいただいて驚いたし、嬉しかった。本当に私が何を喜ぶか考えてくださった、その思いやりに感動してしまった。
しかも本の内容はクリスマスに合った心温まる物語だった。



内容:イギリスの獣医師、ドクター・ヘリオットが優しい目で綴った猫たちの短編物語、十編。
菓子店の威厳ある猫、決してなつかないと思っていた山猫たちとの感動の交流、何度も死の淵から蘇る猫等々…生き生きと描かれる猫たち。ラストはクリスマスの夜、悲しくも最高の贈り物。

ドクター・ヘリオットが獣医として奮闘するシリーズはイギリスではドラマ化もされたお馴染みの物語らしいが、私は存じ上げず今回初めて読んだ。
登場人物名は変えられているものの、動物についてはおそらく全て著者の実体験に基づく話。
だからこそ、ほのぼのした動物とのふれあい日記に終わらない迫真のストーリーとなっている。
表紙のイラスト絵の可愛らしさに気を抜いていると不意打ちでハラハラさせられ、一気に読まされてしまう。
主人公は獣医なのだから、読者としてもやはり傷付いた猫たちと対面しなければならないし、悲しい出来事もある。手に汗握って読んでいて、良かったなと息をつくこともあれば願いが叶わないこともあるのだ。
猫好きはそれを覚悟して読まなければならない。本物の猫と付き合うのと同じように。

私はこの本を読みながら、自分の猫たちのことも思い出して泣かずにいられなかった。
生まれた頃から猫と一緒だった私には、たくさんの猫との思い出と後悔がある。
いつも思い出すのは忠実だった猫たちと、その見返りに何もしてやれず最期は後悔ばかりだったこと。
猫たちの姿を思い出すと同時にどっと後悔の波に襲われるので、辛くてもう二度と猫は飼わないと誓っているほどだ。
(もうあれ以上に愛せないというほど愛した猫がいたせいもある)

でもヘリオット先生の『猫物語』を読んで、後悔だけではなく、彼ら・彼女らの理知的なところも思い出した。
家中を駆け巡りぐちゃぐちゃにするヤンチャさや、人の予想を裏切り笑いを誘う行動の数々も。

ヘリオット先生の言葉で嬉しかったのはこの言葉、
 私はまた多くのひとが猫について抱いていた奇妙な見方を思い出す。猫は自分勝手な生きもので、自分に都合のいい時しか愛情を示さないとか、犬が見せるいちずな愛は望めないとか、自分だけの興味にかまけていて、まったく打ち解けないなどという見方だ。なんとばかげた見方だろうか!
 イギリスでもこのような猫に対する偏見があるのだと知って驚いたが、名獣医の言葉には勇気づけられる。

私は毎日自分を迎えに来る忠実な猫と暮らしていたし、「家」ではなく私についてきてくれた猫も知っている。
猫ほど相手を見て、一途な忠誠心を発揮する生き物はいない。

彼らのそんな態度を思い出すと、ダメな人間ばかり見て絶望した心が温まり蘇るのを感じる。
私もいつか彼らの物語を書きたいと思うようになった。

2014年12月28日筆